前回のブログ「ニックの怖〜い話」では、僕の一番怖い日本語の経験について書きました。
3日間の準備で、2万人の観衆の前でUFCのプロ格闘技のインタービューをしました。
しかし、それは「何が起こったか」の半分だけです。
そして、今日のお話はいよいよ残りの半分。
「どうやって、それができたのか」
ということです。
もちろん、読んでいるあなたには「UFCのオクタゴンで、2万人の観衆の前で通訳をする」なんていう必要はないと思いますが、下記の戦略を自分の「緊急事態」に当てはめられると思います。
例として、僕のUFCでの通訳に向けての準備過程と共に、もっと一般的な例を使いながら、このブログを進めていくことにします。
それは「英語でのビジネス会議」です。
土曜日の夜のUFCイベントについて、木曜日の朝、仕事中に妻のAiから連絡がきました。
電話を切った瞬間の気持ちは、大パニック!!
多分、ここまではあなたも経験があるかもしれません。
- ・突然出席することになったビジネス会議
- ・いきなりかかってくる、海外支社の外国人スタッフからの電話
- ・「来週ね!」と告げられた海外出張
しかし、落ち着きを取り戻して、帰宅してから次の3ステッププロセスを実行しました。
第1ステップ:研究をする
<UFCの場合>
前のブログの書いた通り、僕もAiも全くUFCについて知りませんでした。だから、「UFCのルール」などのUFCの一般的な情報を調べました。
それから、「格闘技」についても調べました。僕が通訳する格闘家の前回の試合は、勝敗の判断が微妙だった、分かり、この情報は後ほどとても役に立つ情報となりました。勝ち負けの歴史から、どういうスタイルなのか、その格闘家の「強みと弱点」などから、「キーワードリスト」を作りました。
<英語のビジネス会議>
もし相手との会議が初めての場合、おそらく今持っている情報は少ないかもしれません。しかし、オンラインの研究によって「会社」やその会社の「産業分野」やミッションなどを調べることで、情報を集めることが出来ます。
それから、会議をする外国人の相手についても、「役職」「職歴」「趣味」などを調べることで、情報を得ることができます。ここで集めた情報は、スモールトークの共通点になる可能性もあります。
<まとめ>
通訳や、英会話で最も怖いことは、「どんな話題が飛び出してくるのか分からない」ことです。会話とはナマモノですから、もしその時に出てきた話題で知らない単語やフレーズがあると、話についていけなくなる可能性がありますよね。これが「怖い」「緊張する」「自信がない」と感じる理由です。
ですが、こうして「研究する」ことで得た情報から、「どんな話題が出そうか」という推測を立てることができ、その推測から「こんな単語やフレーズは必要かもしれない!」と予測することができますね。この「知っておいた方が良い単語」のことを、僕は「キーワード」と呼んでいます。
第2ステップ:キーワードリストを作る
<UFC>
僕の最初のキーワードリストには、UFC専門用語がたくさんありました。でもそれより大切なのは、インタビューの際に出てくる可能性の高い言葉でした。
例えば、前回の大会でその格闘家は負けました。その判定が微妙だったとのことで、今回勝ったらインタービューでそれについて聞かれるかもしれない、と思いました。
だから、僕のキーワードリストのある部分は、下記のようになりました。
- Decision = 決定
- Judgement = 判定
- Strict = 厳しい
- Overcome = 克服する
- Recover = 立ち直る
また、土曜日の試合に、「どういうことがありそうか」についても予測しました。これは「勉強するべきリスト」でした。
しかし、同じくらい大切なものは、「勉強しなくてもいいリスト」でした。
このインタービューは、勝つときのみ行います。だから、負けたことについては全く勉強しなくても大丈夫でした。「勉強しなくてもいい」項目をきちんと把握することは、短期間で結果を出すために一番効率的な方法です。
ヒント:キーワードの使い方に関しては、間違いを防ぐために例文のある和英辞典を使ってこの状態と一番合っている言葉を選びました。
<英語のビジネス会議>
これはある程度会話はもっと幅広いかもしれないですが、実はそんなに違いません。
例えば、会議の目的は絶対に始まる前に分かりますね。そして、何の商品やサービスについて話すのかも分かっている可能性が高いです。そして、この会議は、例えば交渉過程のどのステージにあるのかも、きっと分かるはずです。
さらに、会議がどう進行するかは、大体パターンが決まっていますので、次のステップを予測するのはそんなに難しいことではありません。
下は、ビジネス会議のリストの一例です。
オープニング:
Okay, thank you for coming today. Today, we’re here to discuss …..(トピックやステージ)
今日はご参加くださり、ありがとうございます。本日の会議のトピックは・・・
次のステップへ進み方:
予定通りに進んだら –
Okay, so it looks like we’re able to move forward, the next step is…..(次のステップについて)
では、次の議題に移らさせていただきます。次の議題は・・・
予定以外 –
Okay, so before we move on to the next step, we need to…. (次の必要なことについて)
次の話題に移る前に、・・・について話合う必要があります。
もちろん、詳しいリストが必要です。商品の機能とか、サービスについてとか、契約書のこととか、予測しうる「必要である可能性が高い単語」は、「キーワード」として、リストにしておきましょう!
また、会議の合間や、最初にはビジネスとは関係ない話題をふる「スモールトーク」が必要な場面も出てきます。
スモールトークについて、どんな質問を聞けば良いのかも、考えて、リストにしておくことをお勧めします。
一般的によく使われるもの:
- How was your flight/trip?
- Did you find the office okay?
- It’s hot/cold today, isn’t it?
- Would you like something to drink?
- Is this your first time to Japan? (これは国際からのお客様にだけです)
最後に会議の一般の過程について書いてください:
- Opening/Greetings (オプニングと挨拶)
- Setting the objective (会議の目標をセット)
- Meeting Contents (会議の中身)
- Next Steps (これからの進み方)
- Closing/Greetings (落ちと挨拶)
第3ステップ:練習
この部分は一番大切ですが、実は一番簡単です。
基本的に次の2つのことを考えて、練習しましょう。
柔軟性と繰り返し
一見、この2つは対照的のようですが、実は両方意識することで、相乗的にそれぞれの効果を高めることができます。
まずは、練習するためにはステップ2で作成した「キーワードリスト」を参考に、予測される会話の「下書きのスクリプト」を書く必要があります。
ただ、スクリプトを丸暗記するのみでは絶対に問題が生じます。
もし暗記だけで成功できれば、日本人は恐らく一番英語をペラペラに話せる国だと思います。しかし、残念ながら言語学習では、暗記する努力だけでは成功できません。
それには、柔軟性が必要だからです。
ですから、下書きスクリプトは案内図だと思ってください。
そして、少しずつ部分を変えて、また練習してください。
僕にとってはそれはこういうことでした:
<UFC>
最初はインタビューをふりをしました。
インタビュアー: After the tough decision in your last fight, how do you feel now?
僕(通訳):前の試合の厳しい判定から、今回の勝利に対してどう感じていますか?
格闘家: そうですね。前回は本当に厳しかったけど、今日はそれを考えずに、この勝負に勝つことだけに集中して、勝てたのでとても嬉しいです。
僕(通訳):That’s right. The decision in the last match was really tough. I tried not to think about it today, and just focus on winning. I’m really happy that I was able to do that today.
2回目:
インタビュアー: It must feel great winning today, particularly after such a tough decision last time. Can you tell us what you were thinking about during the match?
僕(通訳):前回の試合は厳しい判定がありましたので、今日の勝利はとても嬉しいと思います。試合中に、何を考えていましたか?
格闘家: 前回は前回、今回は今回。前回は大変だったけど、今回は相手を倒すだけに集中していました。
僕(通訳):That was then and this is now. The last match was tough for me, but today I just focussed on beating my opponent. That’s all.
この「柔軟性のある練習」はとても役に立ちます。
短期間で色んな可能性のある状況を練習すると、実践的な練習になります。
そして、もし練習していなかったことがあって、それに対しより楽に対応できるようになりますので、二重の効果があります。
<英語のビジネス会議>
もしキーワードリストが出来ていれば、これは上記の状況より易しいと思います。なぜかというと、会議をやっている会社は会話をコントロールできます。だから、会議中に出てくる質問などは予測できます。
しかし、質問に対する「答え」も「柔軟性のある練習」が必要です。
<スモールトーク>
自分:How was your flight?
クライエント:It was good thanks. I slept most of the way.
自分:That’s great to hear. Is this your first time in Japan?
…
2回目
自分:How was your flight?
クライエント:It was terrible. There was a young child kicking my seat the whole way.
自分:That’s too bad. Is this your first time in Japan?
クライエント:No, this is my second time. Have you ever been to the States?
自分:Yes, only once, for a family vacation. Were you here on business or vacation the first time?
….
<会議中>
*(リスト)と書いてある文章や表現は、ご自身のキーワードリストに書いてあるものを入れて、考えてみてくださいね!
自分:Do you have any questions about our product? (リスト)
クライエント:Yes, how quickly can you deliver (リスト) and install (リスト) it?
自分:That’s a great question. Delivery (リスト) is usually 6 weeks from order date (リスト) . Installation (リスト) can be done the same day.
…
2回目
自分:Do you have any questions about our product?
クライエント:Yes, what happens if something breaks down or stops working? (よく聞かれる質問をリストに書いて)
自分:Well, we have an international support team, and we provide training during the installation process.
クライエント:Okay, that’s great. How many people can participate in the training?
自分:As many as you’d like, but we recommend at least 3 people to reduce the risk of issues.
….
もちろんこの会議の内容は例文だけです。でも、少し考えれば絶対に自分の状況にあった「下書きスクリプト」をすぐに作ることができると思います。
下のコメントに「どんな緊急状態に準備しなくてはいけないか」を書いてみましょう。
または、どんな英語の状態のために準備したいか、でも良いですよ。
では、「柔軟性のある練習」を頑張ってくださいね!